ふじた(必殺仕事人)
と言えば、「まこと」です。
すでに亡くなられてから、だいぶたたれていますが、
藤田まことさんは、やはり素晴らしい俳優さんだと想います。
特に「必殺仕事人」は子供の頃から大好きでして、今でも、時折、欲望に
勝てずにレンタルしてしまいます。
つい最近も性懲りも無く借りてしまった必殺仕事人。
これがまた、たまらなく良かった。
話の内容としては、仕事人と呼ばれる殺し屋同士の勢力争いが主軸となっているんですが、その中で描かれる、芦屋雁ノ助と研なおこ演じる、仕事人夫婦などの、サブキャラがいい味を出しているんです。
やはり、仕事人の面白さの要素としては、魅力的なサブキャラというのはかかせません。
そして、忘れてならないのが、泣く子も笑う婿養子、中村主水。
家では、姑と妻にいびられ、勤め先の北町奉行所では、上役から昼行灯と罵られる八丁堀同心。しかし、一度、闇の世界に身を投じれば、剣は一刀流免許皆伝、「八丁堀」の呼び名で知られる、凄腕の仕事人。
悪が悪を討つというコンセプトを持つ、この物語の主役としては、申し分の無いダークヒーロー。
悪徳商人には、裏木戸に回り、袖の下を要求し、
仕事人対抗勢力と一騎打ちをする時は、仲間にも内緒の内に、沼に潜水艦を作り、自分の逃げ道を確保。
普段は、昼行灯として、力の抜けた仕事をもっとうとしているにもかかわらず、いざ、自分の正体がばれそうになると、半狂乱となり女性も男性も関係なく、独断で拷問、ついでに、とめに入った上司もぶんなぐる。
自分の保身の為には、なりふり構わず全力で当たる中村主水。
そのダークヒーローぷり、素敵です。
そして、何より、そんな主水が、若い頃、ほれていた女性を忘れられずに、その女性の仇を討とうとしたり、闇で稼いだ金を妻と姑に渡す為に、わざわざ、見つかりそうなへそくり場所を造り、二人にへそくりを見つけてもらう事で、二人に叱られながらも、怪しまれず、闇の金を家に入れようとしている姿は、涙ぐましいものがあります。
当時、同心は、将軍家直属の家来である御家人との位置づけはされていましたが、その実は、お目見え以下の扱いであり、さらにお役目も更新制度を取られていて、更新時に、お役の継続を申し渡されなければ、明日の仕事も覚束無い身の上だったと聞きます。
彼らの禄高は低く、禄高だけで生活する事は難しく、
さらに、不定役人とはいっても、御家人ですので、それなりの体裁は整えなければならず。ご近所付き合いや、養育費にかかる金額は馬鹿になりません。
付け加えれば、時代劇に出てくる岡引は、全て、同心のポケットマネーから、その賃金が支払われており、手下に与える金銭も馬鹿にならなかった筈です。
手先の起用だとか、商売の才能があるというのならば、それなりの副業も見つけられた事でしょうが、これが、「人殺しが得意」な人となると、話がややこしくなります。
もしも、戦国の世なら、それでも、手柄首を挙げれば、それなりの出世は出来たかもしれませんが、残念ながら、中村主水のいた時代は、すでに戦国も遠き太平の御世です。
剣術指南役になれるような一部の者を除けば、中村主水のような選択を選ぶ者もいたのかもしれません。
貧しい町民が、理不尽に踏みにじられ、その恨みを金に換えて、殺し屋に頼み、殺してもらう。
殺すのも悪なら、殺されるのも悪、そして、殺しを依頼する時、依頼者も悪となる。
まさに、悪のスパイラル。地獄道。
そんな物語の中で、
八丁堀同心中村主水玉五郎が、単なる殺し屋ではなく、晴らせぬ恨みを晴らす「仕事人」を副業と選んだ事に、一欠けらの、同心としての意地のような物があったと思いたいついこのごろです。