カタリベ

石川雅之先生の作品です。この方の代表作としては、「もやしもん」があげられると思います。あとは、短編を繰り返し掲載するような形が多いような気がします。

私、わりとはっきした線で描かれる石川先生の絵が、結構好きです。

 

「カタリベ」は、「もやしもん」で漫画賞を受傷されてからの作品ですので、わりと、初期の頃の作品となるのでしょう。

作品のジャンルとしては時代SFってところでしょうか。

時代は南北朝時代。

 

ちなみに、ちょこっとだけこの時代を説明しますと、南北朝時代というのは、京都に開かれた足利幕府を拠点にした武家政治の国家と北朝と、吉野に後醍醐天皇が作った公家政治の作った国家の南朝という、二つ存在していた時代の事です。

 

しかし、後醍醐天皇が吉野に公家政治の国家を作ったと書きましたが、ここで誤解のないように付け加えておきますと、武家政治の北朝ですが、それでは、北朝の方には、天皇はいなかったのかというと、そんな事はないのです。北朝にも、しっかり天皇は存在していて、朝廷も存在していました。

 

…というより、当時としては、天皇の存在そのものが国家といっても過言ではないので、天皇不在の政権などといった物は、単なる暴力集団であって、いまでいうテロリストや、非合法団体といった類になってしまうのです。よって、天皇の擁立は絶対なのです。

 

どんなに天皇の力が弱まろうが、武家政権が強くなろうが、武家は天皇の家臣であって、天皇は天皇なのです。よって、天皇が朝廷を立てるとなれば、それも国として成立ってしまいます。ようは、みんな好き勝手やって、日本が真っ二つに割れてしまった時代と言えるかもしれません。

 

幕府は「天皇が邪魔なら、別の天皇たてればいいでしょう」天皇の方は「幕府が俺の事邪魔っていうなら、別にいいよ、俺がいる場所が日本だもん。だって、俺、天皇だもん」なんて事をやっている時代ですので、規範という物も、おそろしく曖昧にならざるをえません。社会的規範がなくなると、人間は何を導にするかとなると、より身近な価値観を基準にする事になるでしょう。それは血縁だったり、小さな組織の結束だったりするのかもそれませんが、最も、分かりやすい物としては、「欲望」があげられるのではないでしょうか。

 

また、その頃、明国の力も弱まり、海には倭寇が横行していました。言い方によっては、戦国時代とは、また別の意味で、「力さえあれば、誰はばかる事なく、欲望の翼をどこまでも広げる事のできる時代」と言えたかもしれません。

ただ、色々な歴史ものの漫画が、世の中には存在していますが、南北朝時代を背景にしたものは、少ないような気がします。政権が二つに分かれた事によって、当時の資料が集まりにくかったのか、それとも、たんに人気がないというだけなのか、どちらにしても、この設定自体、あまり見ない時代設定のような気がするので、その点をとってみても面白かったです。

 

また、資料が少ないという事は、創作できる割合が増えるという事でもあるので、そういった意味でも、「カタリベ」という作品においては、適した時代設定だったのだろうなと思います。

 

物語の主人公が暮らす島には、明の勢力争いに敗れた豪族たちが暮らしています。彼等

は九姓漁戸という一族でして、自分たちを追放した明国を倒し、いづれは国家の中枢に返り咲きたいと願い、時機を伺っている一族です。

 

しかし、一族とはいっても、ずっと一枚岩というわけではありません。明国打倒!なんて目標をたててはみたものの、長丁場になれば。だんだんと一族の中にも不信感をつのらせる者も出てきます。

 

そんな不穏分子を出さないために九姓漁戸の長老が考えた方法が、「カリスマの対象を創り上げる」という方法でした。具体的な方法は、「人買いから子供を買う」という事でした。

 

こうやって手に入れた子供を自分たちの支配者の血族、「御曹司」として育て、仲間達にもそのように信じ込ませ、「自分たちには尊い御曹司がいるのだから、正当な扱いをうけるべきだ」「御曹司をお守りして正統な地位につかせる事こそが自分たちの仕事だ」と思わせ、不穏分子の不満を、忠義という言葉にすり替えるという荒業をやってのけたのです。

その成果もあり、九姓漁戸たちは御曹司を中心にまとまっていました。御曹司も、自分の出自に疑いを持つことなく、島の中で可愛がられて育ちました。

 

しかし、そんな話を聞きつけた人身売買業者が「御曹司」に奴隷30人分の値をつけた事を倭寇達に伝えました。理由は、「意味はない」との事です。

 

結果として、御曹司は捉えられてしまうのですが、今度は倭寇達の取引材料とされ、御曹司と引き換えを条件に、九姓漁戸大人80人が倭寇に捕まり、奴隷として売られてしまう事になりました。倭寇としては、抵抗されることもなく、80人の奴隷が手に入れば、その方が得だと思ったのでしょう。

 

納得しないのは、御曹司です。この後、海の守り神「ババン様」なる方が現れ、そんな方の力を借りて、御曹司は「80人の仲間を奪い返す」と言って、奴隷商船に特攻します。

九姓漁戸を結束させるために買われ、今度は人買いの気まぐれで襲われ、ひたすら誰かに利用されている御曹司。ちなみに、この時点で御曹司に名前はつけられていません。九姓漁戸の長老にとっては、

御曹司という立場さえあれば、彼に名前は必要なかったという事なのかもしれません。

 

 

島を後にして、有象無象が跋扈する南北朝時代の海洋へと飛び出した御曹司は、利用されっぱなしの人生を取り返すかのように、色々な人達と出会い、その過程の中で、自分の生きる理由や、その為の生き方を自分で決めてゆきます。


ここで出てくる「色々な人」が、とても魅力的に描かれているんですよね。根本的に石川雅之先生は、分けの分からない人を魅力的に描くのが上手い人なんでしょうね。この本は、全巻一冊なので、さらに細かく書いてしまうと完全にネタバレになってしまうので控えますが、万年中二病の私には、おもしろいキャラクター設定だと思えました。

 

正直言えば、この後の石川雅之の作品と比べて、この作品は秀逸な物だとは思いません。むしろ、途中で打ち切られたのか、それとも上手く収集がつけられなかったのか、話の流れに粗さのような物を感じる点もあります。

 

でも、そういうマイナス要素を加味してもこの作品好きなんですよね。

迷走しながらも、言いたい事を一つずつ書いているというのか、「良い意味での同人誌っぽい作品」という印象を私は持っているんですよ。(私の勝手な感想なのですが)

 

だから、本音を言うと、一巻完結じゃなくて、続刊とか出してもらいたいところなんですよね。まぁ、無理だとは思いますけど。

 

 

 


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