関根くんの恋

 

作者は河内遥先生という方です。

私、この先生の作品は、「関根君の恋」以外は読んだことないので、こちらの作家さんの作風がどんなものなのかとはか、分からないのですが、「関根君の声」に限っていえば、「魔法も剣も、お化けも出てこないファンタジー」というような印象です。

主人公の関根圭一郎は、類まれなるレベルのイケメンです。さらに、何事も器用で、仕事もできる。女性からは、かなりもてる。近くに馬でもいようものなら、王子様を連想させてしまう稀有な日本人。かなりというか、若干、神がかり的なレベルでもてる男です。

 

しかし、同時に、それらの好条件を含んでも、なお、残念な男に区分けされてしまう人物です。ちなみに、ここでいう「残念な男」と言うのは、作中に現れる他の登場人物からの見え方ではありません。「残念な男」として彼を見ているのは、作者と読者と、あとは、もしかしたら関根君本人です。ある意味、他の人から見たらわかってもらえない「残念さ」を見る事が、この漫画の肝なのかもしれません。

 

羨ましいくらいのイケメンである関根君は、基本的に常に情緒不安定です。どのくらいかというと、人と話していて、自分が気づかない内に涙があふれてきたり、リリアンを始めると、大きめの紙袋一杯に用途不明な編み物を作ってしまったり、仲良しの友達の奥さんが荷物を持とうとしているのを見ると、痩せすぎている彼女の全身の骨がおれてしまう妄想が始まり、どうしようもなくなってしまったりと、そこそこいっちゃっています。

 

もしも、外見と卒がない仕草で付き合い始めて、関係が深くなって彼の内面が分かったら、人によっては、速攻でアドレス変えて、さよならするレベルかもしれません。なんだか、読み進めてゆく内に、残念すぎて、見ているこっちが切なくなってくるくらいです。

 

そんな関根君は、高校時代からの悪友、紺野君に誘われて合コンに行きます。勿論、合コンでは、関根君が女子の注目をかっさらいます。(この時点では、酒に毒でも混ぜたいキャラですが)関根君は、女の子に趣味を聞かれて、答えられない自分に驚きます。やがて、自分は今までの人生の中で、自分から積極的にのめり込むような事はなかったのではないか。そんな思いに駆られると同時に、強い焦燥感に襲われます。

 

空っぽな自分に気が付いた関根君は、趣味探しを始めます。一見すると、「この程度の事で、空っぽって大げさ!」と読み始めは思うのですが、だんだんと読み進めて、関根君の背景が分かるにつれ、読んでる私達も、しだに彼の持つ空虚感のような物に納得しはじめてゆきます。(それでも、もてもては、ちょっと羨ましいですけどね)

 

あまり、今まで自分の意志で物事を決めた事のない、関根君の趣味選びは、若干迷走しました。そんな関根君が選んだのが何故か「手芸」でした。しかし、手芸用品店で、カウンターのお爺ちゃんに教えられる事になったのが、さらに、もうひとひねり加えて「手品」でした。

何故、手品…。

あれ、手芸用品をちょっと縮めてみると、手〇〇品…、手品?

…え?そうゆう事?

あ、納得…、納得…、

納得できるか!

 

…というような突っ込みはさておき、お爺ちゃんの手品教室に通いながら、手芸を始める事になった関根君ですが、そこで、運命の出会いが生まれてしまうのです。

手芸用品店のお爺ちゃんの孫娘、「如月 皿」ちゃん。

関根君も出会った頃は、単なる手芸屋さんの孫娘としか思わず、名前にすら関心を持たなかったのですが、関根君の中で、少しづつ、皿ちゃんが気になる存在になってゆきます。また、皿ちゃんの中でも、恋愛とは別の意味ではありますが、(主に庇護欲とか、同情とかいう意味合い)関根君が放っておけない存在になってゆきます。後で考えると、関根君の格好良さよりも、彼の残念さに気が付ける皿ちゃんざからこそ、関根君が惹きつけられたともいえるのかもしれません。そうなると、関根君は、惹かれる相手には、必ず引かれるという事になります。なんと、重い十字架でしょうか。

 

さて、ここで関根君の特徴を、もう一つ付け加えますと、「天然の女ったらし」なのです。天然なので、企まずに女性と「××」ができちゃいます。それは、それで羨ましい話なのですが、(漫画を読んでいると、全く羨ましくはないんですけどね)自分から好きな人にアプローチした事がないので、いざ、好きな人が出来て、恋愛を成就させようとすると、なかなかのズレっぷりが生じてきます。

 

勿論、一緒にいる皿ちゃんも、関根君の独特のすれかげんに翻弄される事になります。そうして、生まれる二人のすれ違いが、最初は、状況が特殊なので、少し違和感を覚えるのですが、見慣れてゆくに従って、とても初心で可愛らしい物に思え、応援したくなってしまいます。この辺の「読書が応援したくなる」という恋愛物の必須条件(私が勝手に思っているだけですが)が満たされていて、私は満足できました。

 

あと、これは私の深読みなのかもしれませんが、感想の冒頭で、この作品を私はファンタジーと評しましたが、それは関根君がもてすぎて、「こんな奴いるのかよ!」という疑問を持ってしまったというのもあるんですが、その他にも理由がありまして、それは、この作品で関根君が受けている苦しさって、私達、男性には何処が空々しい感じがしてしまうのですが、女性にとっては、まま起こりうる悲劇なのではないかなと思えてしまったのが切っ掛けでした。

 

例えば、関根君は外見が良すぎて、女の子がよってきて、すぐに肉体関係を迫られてしまいますが、やがて、女の子の方が「あなたには私はもったいない」というような言葉を残して消えてしまいます。

 

他にも、子供の頃の関根君は、かわいい子供だったので、大人に悪戯されて怖い思いを、何度もしますし、大人になってからは、同性からのやっかみも多く、恋愛にも思わぬ妨害が入ってしてしまいます。

 

読み進んでいくと、関根君の人生は、虐待とレイプで人間扱いされていないという印象すら受けます。一見すると、人は醜さを差別し、虐げる傾向があるように思えますが、取り分けて優れた者や、美しい者に対する好機の目や、嫉妬というものは、本人の気持ちよりも、周りの人間から見える外見や行動の印象のみで、その人間を判断して接するという点では、本質は何も変わらないのではないかという疑問すら感じてしまいます。

 

関根君は男性ですし、読んでいる私も男性です。実際のところ、女性と男性だと、置かれている社会的位置や、ジェンダーなんかも作用してくるので、まんま、男性の目線から関根君の苦しみを想像する事は難しいのかもしれませんが、その反面、関根君の立場を女性に置き換えてみると、結構、洒落にならない環境の中を生きてきたのだろうなとも思ってします。それをあえて、関根君を男性として描く事にファンタジー性を強く感じてしまうのです。

 

ファンタジーとは、現実とは違う設定の中で物語を進める事で、現実では分かりにくい「何か」を物語の中ではっきり認識してゆくという意味合いもあると私は思っています。

 

そういった意味を踏まえて、「関根君の恋」という作品を読んだ時に、男性であっても、女性であっても残る違和感そのものが、「関根君の恋」というファンタジーが伝えようとしたかった事の一つでもあるのではないだろうか…、などと考えずにはいられませんでした。

 

 

 


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