高台家の人々

こちらは、ちょっと以前に映画化された作品ですね。映画自体は見ていないのですが、その時の主演は綾瀬はるかさんだったように記憶しております。

 

作者の森本梢子先生は、「アシガール」もお書きになっているんですね。どちらの作品も、とてもテンポが良くて、絵自体がとても面白いので、映像化に向いている作品というのはこういうタイプの物をいうのかもしれません。

 

この「高台家の人々」ですが、主人公は平野木絵さんという、作品の言葉を借りると「ごくごく普通のどちらかとゆうと地味めの29歳独身」の女性です。正直、こういった作品の「ごくごく普通の…」という言葉で表現されるキャラクターというのは、だいたい普通じゃないように思えます。

 

勿論、こちらの木絵ちゃんもその例にもれず、いわゆる「見かけだけ普通」の女の子と言えます。彼女には、少々、変わった所があります。それは、「妄想癖」です。

 

妄想といっても、普通の妄想ではありません。彼女の妄想のクオリティと斬新さは、かなりのものでして、若干、社会生活に支障をきたすレベルです。しかし、こうした才能は、それを表現できる技術や才能と結びついて、世の中に認証させる事が出来るとも言えるでしょう。妄想のみの才能となると「誰にも見つけられない天才」や「人に見られると枯れてしまう、世界一美しい花」みたいな部類に属してしまいます。

 

まぁ、ある意味、世の中の表現者と呼ばれる人々の多くは、発想と表現力の間で足掻いているのでしょうが、そういった人々の中にも、「そういた足掻きを吹き飛ばして、頭の中を誰かに見せられるとしたら、それは、どれだけ凄い作品を披露する事ができるのでしょうか?」こんな疑問を持った事のある人は少なくないのではないでしょうか。

 

また、それを見る事が出来る人にとっては、それはどれだけ魅力的なストーリーとして映るのでしょうか?

 

そして、そんな世界を作り出せる相手は、どれだけ魅力的にうつるでしょう?

 

さらに、そんな人と出会って、恋に落ちずにいられのでしょうか?

 

そんな感じの恋愛物が、「高台家の人々」なのです。

 

木絵ちゃんの彼氏の高台君は、イギリス帰りのエリートサラリーマンで、おばあちゃんは貴族だったりします。こんな人間、現代にいるのかと言いたくなるような、落ち度のないイケメンです。そんな彼にも秘密がありまして、高台君は人の心が読めるという能力を生まれつき、持っておりまして、また、この能力は遺伝するらしく、高台君のお祖母ちゃん、弟、妹さんは、高台君と同じように人の心が読む事ができます。

 

だから、木絵ちゃんの妄想がヒットして、恋に落ちた高台君が、お家に木絵ちゃんを連れて行った時などは、木絵ちゃんの妄想が笑いのツボにはまり、兄弟全員、笑いを堪えるのに必死という、何とも失礼な状態でした。

 

ただ、話はそれだけではありません。

 

確かに、最初の方の、漫画の見どころは、木絵ちゃんの妄想と、高台君の押し殺し笑いなのですが、高台君が木絵ちゃんを兄弟に紹介した辺りから、少しテイストが変わってきます。

 

高台家以外の人間が、兄弟の中に入ってきた事で、高台家の人々の孤独に、すこしずつ焦点があてられてゆくようになります。

 

考えてみると、彼等が孤独を感じるのも無理からぬ事のように思えます。誰かに何かを秘密にしつづけなければならないというのは、それだけで、とても精神的なエネルギーを費やします。そして、それは、その秘密が、共感される事が難しい特異な経験であったり、倫理観にひっかかるような内容の場合、よけいに心労は強くなります。

 

高台家のような、「人の心が読める」という秘密になりますと、まず、特殊すぎて共感してくれるような人間など「自称宇宙人の電波君」くらいのものでしょう。下手にそんな事を口にしてしまえば、いいところ「電波君」、さらに踏み込めば、単なる「危ない人」扱いです。

 

また、万が一、「人の心が読める」という事を信用してもらえたとしても、内容が内容なので、今度は、人間関係その物を破戒してしまう恐れが出てきます。

 

結局、高台君兄弟は、イケメン揃いであっても、「信じられる誰かに自分を開示したい」「受け入れられない事が怖い」この相反する恐怖と欲望の中で、常に「誰にも語らない」という選択を繰り返してきた事になります。

 

そんな状況からか、高台家の兄弟は、ちょっと世の中を斜に構えてみていたり、めちゃくちゃ人に対して臆病だったりとして、捉えようによっては、皆様、どこかしらに残念な所が見え隠れするイケメンだったりします。また、そういう所が漫画に出てくると、高台家の面々が、読んでいる私達にとっても、身近な存在に感じられてきます。

 

そして、一番の見どころは、そうした高台家の人達が、木絵ちゃんの心の中を見ながら接してゆく内に、彼女を信用できるようなり、すこしずつ変わってゆく事なのかなというきがします。

 

勿論、木絵ちゃんが主人公だとは思うんですが、木絵ちゃんという、家族以外の誰かと深く接する事で、高台家全体に波及してゆく、心の変化を主軸にしている物語でもあるのだなという感想です。

 

 

逆に言えば、「人に受け入れられるかどうか分からない不安」や「人に伝えたいという欲望」は、結局、私達にとって、とても身近で本質的なものあって、特に超能力者だからこその悩みという分けではありませんので、読んでいる私達も、共感する事ができるんですよね。

 

さらに、付け加えると、内容が内容なので、どうしてもこの手の内容をテーマにすると、物語の雰囲気自体が重くなりがちなのですが、ここで木絵ちゃんの妄想と、それをテレパシーという他人が入り込めないシチュエーションで覗き見ているという点が、良い意味で物語のテンションを沈ませる事なく一定に保っているのだなと感心させられました。

 

特に木絵ちゃんの妄想は、気持ちがくさくさした時とか、自粛でやる事がない時などに読み直すと、助けられますね。

 

 

 

 


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Author:manga2525
漫画、映画、アニメ、ドラマ大好きです。
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