春の夢

いいですね。泣く子も黙る24年組、天下の萩尾望都先生の作品です。

こちらは、数十年ぶりに描かれた「ポーの一族」の続編です。

萩尾望都先生は、インタヴューで、昔のような線はもう書けないという仰っておりました。確かに、少女コミック連載時の「ポーの一族」の線の細やかさとは、ちょっと違ってはいますね。人によっては、その違いに苦手意識を持つ人もいるという話も聞きますが、私の場合、読み始めこそ、不思議な感じはしましたが、すぐに慣れて、物語の中に引き込まれてゆきました。

 

私としては、萩尾望都先生の繊細な線は勿論のことなのですが、ストリーテーリングの力の方に強く惹かれておりましたので、全く問題ないんですけどね。

 

調べてみたら「ポーの一族」の連載が終了したのが、1976年、「春の夢」が連載されたのが2016年から2017年間の事なので、40年ぶりの続編という事になります。これで、同じ線が描けたら化け物です。

 

「ポーの一族」自体が古い作品なので読んだ事がない方もいらっしゃると思いますので、ちょこっと「ポーの一族」の粗筋を書きます。平たく言っちゃいますと、ヴァンパイア物ですね。

 

主人公はエドガーというヴァンパイアの少年です(作中ではヴァンパネラと呼ばれています)他のヴァンパイア物と同じように、彼等はヴァンパイアになった時点で年を取らなくなります。だから、多くの者は、ヴァンパイア同士で村をつくり住みつき、一年に一度、人をさらってお祭りのように「気」を吸ったりします。それ以外は、ほとんどの時間を寝て過ごし、主な仕事といえば、「気」を補給する為の薔薇の花を育てたりするくらいです。薔薇の「気」というのが主食で、人間の「気」はイベント食と思って頂ければ良いかと思います。

 

そういった生活に馴染めない者や、何かしらの理由で村にいられなくなったヴァンパネラは、流れ者として旅をします。時に、年齢の違うヴァンパネラ同士でチームを作るわけなのですが、その際に家族の形をとります。また、家族の形をとりながら暮らしても、一つの土地に定住する事はありません。いくら家族が怪しまれにくいとはいっても、誰も歳をとらないし、死なない家族なんていうものは、怪しすぎます。

 

もしも、人間ではないという事がばれてしまえば、杭で胸を刺されて殺されてしまいます。ヴァンパネラは、不死身ではあっても、けっして無敵ではないのです。実際、エドガー達の住んでいた村は、近くの村民によって、滅ぼされてしまいました。そんな理由もあって、エドガー達は、用心しすぎても足りないという気持ちを持ち、旅をしているのです。

 

 そんな用心深い旅を続けているエドガー達ですが、旅先の小さな港町でヴァンパネラである事が発覚してしまい、エドガー以外のヴァンパネラは、皆殺しとなってしまいました。その後、エドガーは、騒動の中で、新しい同胞となった「アラン」という少年と二人で旅をする事になります。永遠の少年のまま…。

 

「春の夢」は、その後の「エドガー」と「アラン」の話です。

ストーリーは、こんな感じです。

1944年第二世界大戦中のイギリス、ウェールズ地方、アングルシー島にいきついたエドガーとアランは、ある少女に出会います。小さな弟を連れた少女は、まるで、はぐれた小鳥のような目をしていました。道すがら見かけただけの少女なのに、何故かエドガーの心の中には、少女の事が、いつまでも引っ掛かっていました。

 

少女の名前は「ブランカ」、弟の名前は「ノア」二人は、ドイツのホロコースト(ユダヤ人の大量虐殺)を逃れ、兄弟二人だけでイギリスの親戚の家に身を寄せていました。もしも、ドイツが侵攻してきた時の事を考え、両親とはオランダで別れて、兄弟二人だけ親戚の助けを借り、イギリスへと逃れてきたのです。それはブランカが11歳の頃の出来事で、現在の彼女は16歳となりました。

 

当時、イギリスとドイツは戦争中でしたので、イギリスでは敵国の人間と敵視され、ドイツではユダヤ人として差別され、身の置き所もなく、頼るべき両親は安否も分からず、彼女は不安な気持ちを押し殺しながら毎日を過ごしていました。両親と再会した時まで、弟のノアを守るのが自分の役目なのだと、自分自身に言い聞かせながら、再び、両親と暮らせる事だけを希望にいきる。ブランカはそんな少女でした。

 

ひょんな事から、エドガーは彼女の家を知り、二人は家を行き来する間柄になります。エドガーがビアンカを気になるように、しだいに、ブランカもエドガーの年齢とはそぐわない洗練された身の振る舞い、落ち着き、そして、優しい気遣いに惹かれてゆくようになります。年齢にそぐわない環境で生きる事を余儀なくされた少女が見つけた、年相応の恋でした。

 

そんな中、兼ねてより、長く患っていた、ビアンカを引き取っていた親戚のオットマー氏が亡くなりました。エドガーとは別系統のヴァンパネラの一族も、オットマー氏の死に関わり、物語は一気に動き出します。

 

ラストは書きませんが、読み終わった後に、心に残る切なさと、人間としての感情を残しながらも、永遠にも近い時を生きなければならないヴァンパネラ達の哀しさを想像し、物思いに耽ってしまいました。

 

是非、エドガー達の生きる永い時間の一片を、一緒に垣間見る事ができれば嬉しく思います。

 


コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

manga2525

Author:manga2525
漫画、映画、アニメ、ドラマ大好きです。
すっかりメディアにはまり、きっと、その筋の業界の方には、
私はなかなか良いお客さんなのだと思います。
でも、いいんです。よくよく分かっている事ですので、…というわけで、一人でテレビや本みてほくそ笑んでいるのもなんなので、人前で語ってみようと思い始めたブログです。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR