シグルイ

原作は南条範夫先生、作画は「覚悟のすすめ」で有名な山口貴由先生です。

 

南条範夫先生が書かれた原作は「駿河城御前試合」という時代小説で、題名の駿河城御前試合に出る十一組の因縁ある対戦者同志の物語の短編集で、「シグルイ」はその中の「無明逆流がれ」をもとに膨らませた作品です。

 

原作の駿河城御前試合を私は読んではいないのですが、35ページ程の短編とのことなので、その内容は、かなり作画の山口貴由先生の創作が加えられていると思われます。

しかし、私が読んで気に入ったのは、山口貴由先生の手のはいった「シグルイ」なので、特に問題はございません。

 

あらすじは、そんなに複雑ではなく、駿河城御前試合で行われる、十一組の内のひとつの対戦を取り上げ、その対戦者同志の出会いから、対戦にいたるまでの経緯を描いてゆくという構成です。

ここで、ひとつ注釈なのですが、この駿河城御前試合というのは色々な経緯がありまして、大前提として、ルールが真剣での命のやり取りということになっています。本来、木刀を使って、さらにマジ打撃ご法度な御前試合で、そんなファンキーなルールが適用された経緯も作品内で描かれているので、お読みの際は切迫した作中の世界観をお楽しみください。

 

…とにもかくにも、藩のお偉いさんも、そんな狂った試合は、ふつうの人間にはさせられません。しかし、その理由は、試合者の安全がどうとかいう物であろうはずがありません。本当の理由は、下手な人間を選んでしまい、無様な試合をやられた日には、主催のクレイジー殿様の逆鱗にふれて、自分たちまで、お手打ちにされてしまうからというものです。

 

そんな理由から、藩のお偉いさんは、家中でも遺恨のある者同志、仇討願いが届けられている者同志等、今にも一触即発しそうな人間同志を集めて戦わせることにします。

ようは、お殿様の我儘と、藩内の火種、両方をなんとかしようとしたというのもあるのでしょう。

 

そういった経緯により、御前試合に参加する十一組、二十二人、全員が因縁浅からぬ者同士の公開泥沼大会となってしまったのです。

 

勿論「シグルイ」の主人公、藤木源之助、対戦相手、伊良子清玄も元は「虎眼流」という剣術流派の同門であり、かつては龍虎と並び称され、「どちらかが流派を継ぐことは間違いない」とまで言われた剣術家でした。

 

物語の冒頭、御前試合で二人が向かい合った時、藤木源之助は隻腕の剣士、伊良子清玄は盲目、跛足(足を引きずっている人ね)の剣士。

 

だが、次の場面で、描かれた昔の二人…。

その頃、藤木の胴着の袖からのぞいた逞しい二本の腕は、木刀をしっかりと握り、伊良子清玄は瞳に強い光を宿し、鍛え上げられた脚力で天性の俊敏さを発揮していた。

互いの技を高め合う二人が、なぜ傷だらけの体で御前試合に臨むこととなったのか…。

 

15巻という長い話ですが、退屈することなく最後まで見る事ができました。同じ場所で同じ分野を学んでいた者同士が、公衆の面前で殺し合う経緯や、二人の関係の変化、心理描写、二人を取り巻く環境の変化なんかを丹念に描いていったら、15巻くらいは平気でいってしまうのでしょうね。

 

特に見所の一つとしていえるのが、二人の師匠である岩本虎眼先生の狂い方です。漫画誌に残るいかれっぷりといってもよいのではないでしょうか。本編の中で、多くの時間、虎眼先生は心神喪失状態です。その描き方は、一見すると認知症が発症したようにも見えますが、また、一見すると全く別の状態のようにも見えます。さらに、質が悪い事に、この虎眼先生、残酷ぶりと武術の腕と欲望はそのままに自分を見失っています。その為、道場内で誰かが殺された場合は、必ず最初に疑われるのが道場主の虎眼先生という有様です。そして、この虎眼先生、常に意識が飛んでいるわけではなく、時々、冷静な状態に戻るのですが、始末の悪い事に、冷静に戻った時の方が、遥かに残酷で、狂っているという事です。この点だけでも、一読の価値はあります。

 

また、作画の山口貴由先生の絵が、少年漫画のタッチから、作品の世界が深くなってゆくにつれ劇画タッチに変わってゆくのも見物です。

山口先生は、昔、週刊チャンピオンで「覚悟のススメ」や「悟空道」などを描いていた作家さんで、その世界観やキャラに対する熱量が半端ではなく、読むうち引き込まれていったのを憶えています。

そうした想像力が良い方向で、原作に描かれていない部分の「無明逆流がれ」を組み立て、「シグルイ」という形になったのだなと、妙に納得させられてしまいます。

興味のある方は是非、ご一読ください。

 

 

 


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