魔夜峰央の妖怪缶詰

最近、映画化され話題になった「翔んで埼玉」や「パタリロ」で有名な、魔夜峰央先生のホラー短編集です。

 

結構、子供の頃に買った漫画なんですけれども、改めて値段を見てみると980円。

当時の私は、小学生でした。考えてみれば30年以上昔の小学生だった私にとって、980円はかなりの大金でした。

 

何度も本屋に通い、買うか買わないかを迷った事を覚えています。ちなみに、やっと決断して買った時には、立ち読みしすぎて、中身の漫画はあらかた読み終えた後だったという落ちもあります。(その頃は、漫画にビニールなんて掛かってなかった時代でしたからね)

 

しかし、中身を全部知っていたとしても、少年ジャンプ一か月分の金額だったとしても、「手元に置きたい!」当時の私に、そう思わせるだけの力が、この漫画にはあった。という気持ちは、今でも揺らいではいません。

 

内容の構成は、「日本の妖怪」をモチーフにした作品、「西洋の妖怪」をモチーフにした作品、そして、短編毎の運びをよくするためのギャグ仕立ての「妖怪学雑感」で構成されています。

 

司会進行のような役割を担っている、この「妖怪学雑感」が魔夜峰央本人と、長期連載作品の「パタリロ」の主人公パタリロが掛け合いをしながら進めるという形式でした。今、思うと、ハリウッド映画やアメリカのテレビシリーズでやっていたオムニパス形式のホラー番組とかを意識していたのかもしれませんね。

 

当時の私は、すでに「パタリロ」にどはまりしており、お小遣いが貯まると、一冊ずつ「パタリロ」を買い集めていた子供でしたので、ホラー漫画云々よりも、むしろ、パタリロシリーズを収集する一環として購入したという意味が強かったのかもしれません。

 

勿論、私自身、当時からホラー物は大好きでして、ゲゲゲの鬼太郎(旧マガジンKC)や、デビルマン、日野日出志先生や、山岸涼子先生の作品などは買いあさり、読み漁りしていました。しかし、当時の私から見ると、他の作品に比べ、「妖怪缶詰」に収録されている作品は、恋愛を強く押し出した物が多く、正直、分かりにくさを感じてしまう作品もあり、むしろ、知っているキャラクターが登場するギャグテイストの「妖怪学雑感」の方が、読みやすかったのだと思います。

 

しかし、根が妖怪好きの子供なので、分からないなりに読み続けてゆくと、成長するとともに面白さを感じるようになり、次第に、魔夜峰央先生のエンターティメント色の強い、ホラー作品に魅せられるようになってゆきました。こういっては何ですが、私の恋愛観の基礎は、魔夜峰央先生、山岸涼子先生、吉田秋生先生あたりに教えられたと言っても過言ではりません。(それはそれで問題なのかもしれませんが)

 

そんなこんなで、最初は分かりすい「妖怪学雑感」やブラックユーモアの「パンドラキン」(パタリロのコミックスにも収録されてはいますが)なんかを読んで楽しんでいたのですが、年代が変わると同時に、他の短編も、どんどん楽しめるようになってゆきました。さらに、そうやって楽しみの幅が広がるにつれて、本の構成に対する印象も変わり、最初はギャグ漫画としてのみ楽しんでいた「妖怪学雑感」を他の物語の兼ね合いの中で、「妖怪缶詰」という作品を完成するために、とても重要な物として理解するようになっていきました。

 

さて、本編のホラー短編ですが、基本的には魔夜峰央先生は少女漫画の先生なので、絵や話はとても綺麗です。なんなら「耽美派」という言葉を使ってもいいと思います。

 

集められた作品の数々は、魔夜先生が長い間、長編連載とは別に、各誌の短編読切で、まばらに掲載してきたものを集めた短編集なので、作風や絵柄にもいくらかばらつきがあります。ただ、どの作品にも一貫して言えるのが造形美、様式美に対する拘りなのかなと思います。

 

また、長い時間でできた作品のばらつきとは言いましたが、それらの違和感を埋めるのに、「妖怪学雑感」がとても役立っています。過去の作品を並べる中で、進行の主軸に、現在の魔夜峰央先生の作品(それも超長期連載のパタリロを使った作品です)がある事で、過去の作品を読んだ後に、その都度、フォーマットしてもらえるような感覚があるので、少し悲しい話でも重くなりすぎず、安心感を持って読み進められました。

 

特に私が好きな作品は、花屋の美少年ミロールが活躍する「怪奇生花店」。イケメン陶芸家の闇を描いた「女妖観音」。少しずつ訳の分からない何かに日常が浸食される恐怖を描いた「怪奇スペースハンド」。一日中穴を掘り続ける怪しい男が出てくるブラックユーモア、「焼肉はいかが?」なんかがあげられます。

 

どれも怖くてトイレに行けなくなるという類のホラーとはちょっと違うかもしれませんが、物語として、それぞれの完成度が高いので、作品一つの面白さを見ても、また、短編作品集という視点から見ても、まさに魔夜峰央ホラーショーと言って良いほど完成度の高い作品だと思います。

 

少なくとも魔夜峰央先生の作品がお好きな方は、持っていて損はしない。…いや、持っていないと損をする作品と言えるかもしれません。

 

 

 

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

manga2525

Author:manga2525
漫画、映画、アニメ、ドラマ大好きです。
すっかりメディアにはまり、きっと、その筋の業界の方には、
私はなかなか良いお客さんなのだと思います。
でも、いいんです。よくよく分かっている事ですので、…というわけで、一人でテレビや本みてほくそ笑んでいるのもなんなので、人前で語ってみようと思い始めたブログです。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR